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JB Press 2012.11.27(火) 姫田 小夏
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36610
中国の太陽光発電業界は万策尽き果てるのか
供給過剰に追い打ちをかける欧米市場からの締め出し
欧州債務危機が中国の輸出不振をもたらし、「世界経済の頼みの綱」である中国の経済成長を圧迫する――。
半年ほど前に懸念された負の連鎖が、まさに今現実のものとなった。
直撃を受けたのは中国の太陽光発電業界である。
欧米市場は頭打ち、中国国内でも過剰な生産設備を抱え、八方ふさがりに陥った。
あの「世界一」を標榜した太陽光パネルメーカーのサンテックパワー(尚徳太陽能電力有限公司、以下、サンテック)でさえ、経営破綻の危機に追い込まれている。
サンテックの経営破綻危機はもはや周知の事実となっている。
実際に取引に関わったサプライヤーは「資金回収ができない」と嘆き、中国メディアは
「経営者一族は資産を別会社に移管し、自分たちだけ逃げ切るつもりだ」
と責め立てる。
サンテックは、中国企業として初めてニューヨーク株式市場に上場した世界最大の太陽光パネルメーカーである。
2006年に日本の中堅太陽電池メーカーのMSKを買収して以来、過去5年で売上高を100倍、営業利益を200倍に伸ばした。
創業者の施正栄(シ・ジェンロン)氏は、2000年の起業からたった5年で「中国一の金持ち」に躍り出た、いわゆる“チャイナドリームの権化”だった。
ところが今、サンテックは2012年3月時点で約16億ドルの純負債を抱えている。
ブルームバーグの報道によれば、
「2011年1~3月期(第1 四半期)以降、赤字決算が続き、8月末に出された決算速報(第2四半期)には、債務負担の詳細が記載されていなかった。
同時にNY証券取引所は、サンテックに対し上場廃止の可能性を警告している」
という。
中国の経済メディア「証券市場周刊」もこう警戒する。
「2012年第3四半期には、A株上場66社(注:上海・深センの株式市場にはA株とB株がある。
A株は基本的に外国人投資家が取引できない)の太陽光発電企業の在庫は500億元にも膨らんだ。
その一方で、売上高は100億元にも満たなかった。
サンテックが拠点を置く無錫市でも、上半期の営業収入は200億元足らずと、前年同期の4分の1に減少した。
太陽電池メーカーの大全新能源や晶澳太陽能などの太陽光発電関連メーカーも、NYナスダック市場から上場廃止の警告を受けている」
だが、「サンテック倒産」の報道はない。
それは、サンテックが本拠地を置く無錫市の市政府が、サンテックの倒産回避に必死になっているためだ。
地元メディアは
「8月の施正栄CEO辞任を受け、新CEOに昇格した金緯氏は無錫サンテック(サンテック子会社)の倒産を提案したが、無錫市政府の猛烈な反対に遭った」
と伝える。
約89億元にも上る無錫サンテックの借金を無錫市政府と銀行に押しつける形だ。
また、倒産させれば無錫市だけでも5万人が職を失う可能性があるほか、サプライヤーも積もりに積もった売掛金10億元の回収ができなくなる恐れがある。
■工場が退去し「もぬけの殻」となった開発区
危機的状況なのはサンテックだけにとどまらない。
いまや中国の太陽光発電業界には「壊滅的な危機」が忍び寄っている。
上海市の北部に隣接する江蘇省は、400社を超える太陽光発電関連企業の一大集積地として知られ、蘇州市だけでも世界のトップ15社のうち5社を集める。
また、蘇州市に隣接する無錫市には、世界の巨頭であるサンテックを筆頭に50社ほどが集まった。
太陽光発電産業がピークだった2010年には、江蘇省内426社の生産規模は2290億元(約3兆円)に達した。
しかし、様相は一変した。
テレビの画面には、太陽光発電関連工場が退去し「もぬけの殻」と化した省内の開発区が痛々しく映し出される。
ある中国人弁護士は「うちの顧客(日系企業)もサンテック絡みでやられました」と話す。
また、ソーラーパネルメーカーに部材を供給する企業(蘇州市)の中国人経営者M氏も、
「40倍に上がった関税では、対米輸出はムリ」
と稼働縮小をほのめかした。
太陽光発電ブームで一時は財政が潤った江蘇省だが、かつて世界の市場を牛耳った国内屈指の「ソーラーパワー拠点」には、今“怪しい黒雲”が立ち込めている。
その原因は何か。
1つは「需要を無視した無秩序な生産」である。
中国の太陽光発電関連製品の生産量は、世界市場が消化しきれないほど過剰なものだった。
中国メーカーは売り上げの9割以上を輸出に依存してきた。
この「過度な輸出依存体質」も大きな要因だ。
やみくもな誘致や設備投資を許した背後には、笛を吹いて中国企業を踊らせた地方政府の存在がある。
■欧州と中国が「アンチダンピング調査」合戦
中国製品が世界市場から締め出しを喰らっているという状況も見逃せない。
アメリカでは11月8日、中国製の太陽電池にアンチダンピング課税(18.32~249.96%)と反補助金課税(14.78~15.97%)を決定した。
不当に安い中国製品に課税する措置だ。
これによって、太陽光発電関連の中国製品が米国市場に入り込む余地はなくなったと言える。
11月1日、中国商務部は、EUから輸出されてくる「ソーラーグレードシリコン」(太陽光の原料となる高純度の精製シリコン)についてアンチダンピング調査を開始した。
EUのソーラーグレードシリコンが自国市場でどれくらい不当に安いか、自国企業がどれくらい被害に遭ったかを調査するというものだ。
2012年9月に、EUは中国の太陽光発電関連製品についてのアンチダンピング調査を開始している。
中国は、それに対する報復的措置を行ったというわけだ。
4日後の11月5日、中国政府は
「EUの加盟各国が太陽光発電関連製品を対象に補助金を支給し、輸入品に対する競争力を不当に高めている」
と主張し、EUをWTO(世界貿易機関)に提訴したと発表した。
ちなみにEU市場は、中国にとって太陽光発電パネルと周辺機器の重要な輸出先であり、その金額は 210億ユーロにも上る。
中国の大衆紙「東方早報道」は
「全球光伏貿易戦正式爆発」(全世界で太陽光発電の貿易戦争が勃発)
という見出しを掲げた。
また、中国商務部は今夏からアメリカや韓国の「ポリシリコン」(太陽電池の原料となる高純度の多結晶シリコン)に対しても、アンチダンピング調査を開始している。
2012年1~9月までの間に、中国が輸入したポリシリコンは6万4496トン。
前年比33%増となり、すでに中国の昨年の輸入総量を超えた。
ポリシリコンが中国市場に入り込んでいるのは、世界市場で行き場を失ったアメリカや韓国が、安価な製品を中国市場に売りこんでいるためだと言われている。
ポリシリコンの国際価格は、2012年1月時点でキロ当たり35ドル前後だったが、11月7日時点では最高値が16ドル、最低値が14.2ドルと、約60%も暴落している。
「中国のポリシリコンメーカー43社のうち、8~9割がすでに生産停止状態」(中国有色金属工業協会)
というのも、急速な価格低下に直面した業界の惨状を物語っている。
■最初から最後まで政府頼み
中国が省エネおよび環境保護の強制的推進を掲げるようになったのは、2006~2010年の経済成長計画を定めた「第11次5カ年計画」からだ。
太陽光発電業界は「資金力と設備、原材料さえあれば始められる」と言われた。
また中国では唯一、民間企業が入り込んでシェア拡大を狙える領域でもあった。
政府からの補助金も追い風となり、当時、多くの資本が参入した。
瞬く間に生産拠点が広がり、太陽光発電の生産工場は中国全土で100カ所以上の都市に増殖した。
「国家が掲げた計画目標を達成させ、出世したい」
という、地方政府の役人らの“欲望”もその流れを加速させた。
開発区への誘致を企てる地方政府は
「100億元を投資すれば、土地はタダで提供する」
など出血大サービスを行い、資金を出資し、企業の保証人にさえなって、銀行からの融資を膨らませた。
その結果、「生粋の民間企業による健全な市場運営」とはどんどんかけ離れていった。
結局、経営は地元政府の資金によって行われることになった。
しかし、それは本来“他人のカネ”である。
経営者は企業内で発生した伝票を政府に送りつけ、何かあれば政府に「何とかしてくれ」と頼み込む。
経営者は “私情原理”に動かされ、市場を意識するどころか、市長の顔しか見えていなかったことは容易に想像がつく。
太陽光バブルが崩壊し、業界壊滅の危機にあっても、前出した蘇州の企業経営者M氏は、
「我々は悲観していませんよ。いずれ政府がなんとかしてくれるでしょうから」
と、どこか他人事であった。
11月9日付の「東方早報」には、サンテックCEOの施正栄氏の発言が掲載されたが、これも同じような内容だった。
「企業と政府の連帯を強め、競争の過熱を防ぐような政策を出してもらいたい」――。
政府に頼ろうとする姿勢は、この期に及んでも変わらない。
■中国の太陽光バブル崩壊で世界経済がドミノ倒し?
果たして中国の太陽光発電業界は復活できるのか。
「むしろこれからが本当の泥沼だ。
ほとんどの企業の借り入れに市政府が保証人になっており、銀行はその資金回収に頭を痛めている」(中国人コンサルタントのP氏)
また、アメリカの調査会社であるGTMリサーチは、次のように指摘している。
「2011年にもたらされた太陽光発電産業における需給関係のバランスの崩れは、2014年までに回復することはないだろう」
その一方で、サンテック崩壊を好機に「ようやく健全な商売ができる時代が来る」と期待する企業もある。
中国の太陽光バブルの崩壊は、輸出依存型の産業構造の危うさを象徴する典型例でもある。
だが、内需に期待できるのかと言えば、それもまた難しい。
中国の空は地方でも大気汚染がひどく、安定的に日照を確保することは難しい。
高層マンションが多い都市部では、そもそもソーラーパネルを置くスペースすら確保することが困難だ。
中国政府のテコ入れで過剰に生産された太陽光発電関連製品は、国際市場にばらまかれ、各国で貿易摩擦や経済対立を引き起こし、産業全体を破滅に追い込む可能性をも秘めている。
中国の太陽光発電産業の凋落は、
「中国内部の矛盾」を白日のもとにさらけ出したとも言える。
中国の「特色ある社会主義」は、このまま世界市場をドミノ倒しのようになぎ倒してしまうのか。
前政権の膨大なツケを押し付けられて船出する習近平政権は、世界経済の負の連鎖の発火点となる大きなリスクを背負わされている。
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これから、この手の中国式資本主義企業の倒産は増大する。
中国の経済はEUとアメリカによって支えられている。
そのEUに陰りがみえ、中国経済は減速状態に突入している。
この動きは加速度的に広がるだろう。
中国経済がバブル的に破綻するのはあと数年と見る人もいる。
世界は現在デフレに傾いている。
単純にいうとそれは「モノの作りすぎ」によっている。
使用量より生産量の方が多いということである。
不景気になれば人はモノの使用を制限する。
しかし、生産は旧来通りに続けられる。
モノが巷に溢れてくる。
とすればモノの値段が下がる。
下がっても売れない。
さらに下がる。
デフレになる。
単純な原理で動いている。
昔は人がモノを作った。
今は機械がつくる。
機械は疲れない。
それに人間は8時間働く。
機械は24時間働く。
生産量は多くなっても少なくはならない。
過剰生産が蔓延する。
デフレは止まらない。
モノを作り過ぎる時代が世界にやってくる。
そのとき、世界の生産工場たる中国は危機に見舞われることになる。
作りすぎる国家中国は、次から次へと溜まっていくモノの洪水で深刻な状態になる。
中国にとっては「いま、そこにある危機」なのである。
パクリとは、「いまそこにあるモノ」なのである。
いまそこにあるモノはパクってどんどん作れる。
モノが余ってくると、人は「いまそこにないモノ」を欲しがる。
それを作れるかである。
人が何を求め、何にお金を払うかである。
パクれないものが、明日を作っていく。
パクれるものは在庫の山を作っていく。
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サーチナニュース 2012/11/30(金) 17:38
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=1130&f=business_1130_169.shtml
中国アパレル業界に積み上がる在庫、中国人全体の3年分
中国全土に存在するすべてのアパレル工場の生産ラインが3年停止したら、どうなるだろう。
着るものもなく、だらしないかっこうの中国人があふれる様子を思い浮かべたかもしれないが、実際はまったく心配ないほど、在庫が積み上がっている。
中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。
■「中国経済」写真特集
四半期報告によれば、中国のA株に上場する22社のアパレル企業の第3四半期の在庫が382億元(約5058億円)に達した。
三槍集団常務副総経理の曹春祥氏は
「アパレル企業の在庫は3年かかっても消化しきれない」
と分析する。
上半期の在庫だけで17億5300万元(約228億円)という「美邦服飾」では、第3四半期にさらに4億4600万元(約58億円)分の在庫が積み上がる見通しだ。
「七匹狼」の在庫は2億4400万元(約32億円)増加、「探路者」は2億元(約26億円)近い在庫が増える。
「森馬」も12年上半期の在庫は14億7000万元(約191億円)になるという。
一方、データを直視すると、上半期の在庫回転日数が100日以上の上場アパレル企業は30社に及ぶ。
うち、在庫回転日数が最長の上位3社の上場企業は、1万843日間の「ST雷伊B」、1557日間の「雅戈」、1199日間の「紅豆股分」だった。
在庫問題の原因は輸出の不振だ。
税関統計によれば、12年1月から8月にかけ、紡績アパレルの輸出不振はさらに深刻さを増している。
しかし、上海晨錦コンサルティングの張経理は、
「デパートの専門コーナーが中国のアパレルの伝統的な販路であり、デザインから販売までの周期が長い。
ZARA、H&Mなどのファストファッションは、中国の伝統的なビジネスモデルに致命的な打撃を与えており、中国の現在のビジネスモデルが在庫超過という事実をもたらした」
と分析した。
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