2012年11月24日土曜日

おそらくもっともしたたかなリーダー習近平:にこにこ笑って悪を為す

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●2012年11月の第18回共産党大会で党総書記に選出された習近平氏(59歳)。向こう10年間、拡大する中国のかじ取りを担うことになった。いかなる人物でどのような内外政策をとるであろうか。実態に即して追求してみる。写真は第18回中国共産党大会。



レコードチャイナ 配信日時:2012年11月24日 7時53分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=66734&type=0

<コラム・巨象を探る>
対日政策、「政経分離」へ踏み出す―バランス重視型の習近平総書記

 2012年11月の第18回共産党大会で党総書記に選出された習近平氏(59歳)。
 向こう10年間、拡大する中国のかじ取りを担うことになった。
 いかなる人物でどのような内外政策をとるであろうか。 
 実態に即して追求してみる。

 2007年の前回(第17回)共産党大会で彗星のごとく「ポスト胡錦濤」としていきなり常務委員に抜擢されたことに海外メディアの多くは驚愕した。
 半年前に上海市党委員会書記になったばかりで、党中央では中央委員でしかなく、政治局員ポストを飛び越えたためだ。
 習氏に白羽の矢が立った理由は、省や市の党トップとして頭角を現した地方幹部としての実績のほか、もともと近かった江沢民前国家主席派だけでなく、胡錦濤国家主席グループの受けもよかったこと。
 さらに「習仲勲(元副首相)の子」との信頼だった。
 仲勲氏は文化大革命で失脚したが、名誉回復を果たし、トウ小平を支えた。
 改革派としての考えを貫いた人格者で、胡氏らが尊敬していたことも大きかったようだ。

 対抗馬と目された李克強氏は北京大学大学院出の経済学博士で、
 「中国が今後直面する経済の政策運営を行う責任者に適任」
との見方も多く、首相ポストに回った。

 周囲の習氏評は、
 「誰とでもソフトに話す敵をつくらない人物」
ということで一致している。
 青少年時代に父親の失脚に伴う農村暮らしや下放(文化大革命時代の青年を地方農村地帯に送り出す政策)による苦難の生活経験からか、胆力にすぐれ、苦労している人や貧しい人への思いやりは人一倍といわれる。文革終了後も、志願して河北省の貧困地域に職を求めた。

 習氏と出会った日本の政財界人の多くも
 「微笑しながら静かにしゃべる抑制的な人物」との印象を抱いている。
 誰にでも気さくに会い広い人脈を築いているとも言われる。
 こうした事例から「全方位志向のバランス重視型」の人物像が浮かび上がる。

 ただ、言うべき時にはきちんと主張するタイプでもあるようだ。
 「腹がいっぱいになってやることのない外国人が、我が国の欠点をあれこれあげつらって批判している」―。
 2009年2月、メキシコを訪問した際、中国の人権問題に対する欧米の批判を念頭にこう語り、「中国の次のリーダーはタカ派」との見方が広がった。

 習氏は5年前の常務委員就任後、共産党政権の威信をかけた北京五輪の準備と運営の責任者といった重責も担った。
 分離・独立の動きがくすぶるチベット族居住地域で五輪前後に相次いで不穏な事件が起きたが、厳しい取り締まり姿勢を崩さず、党の期待に応えたとされる。
 アジア、アフリカ、欧州、南米とバランス良く「顔見せ」外交を展開し、2012年2月、その仕上げで米国を訪問した。
 日本には09年12月には訪日して天皇と会見した。
 外国要人が天皇と会見するには、一カ月前までに申し込むのが慣例となっている中、中国側は1カ月を切ってから打診。 
 日本側が一度は突き返したが、民主党幹事長だった小沢一郎の働きかけで実現した。 
 習氏は天皇陛下との会見により、次期トップリーダーとして箔を付けることができ、天皇と日本国民に深く感謝しているという。

▽格差是正と腐敗撲滅に強い意欲

 習新体制は、果たしてどのような政策を遂行するだろうか? 
 内政的には安定的経済成長と格差や腐敗などの社会構造の改革の二大目標達成が急務である。
 習総書記は最近、
 「われわれの党では深刻な紀律違反や卑劣な法律問題が発生し、政治に悪影響を及ぼし、人々に衝撃を与えた」
と言及。
 「党員、特に党幹部は、個人の利益のために職権を乱用し、法律を曲げることがあってはならない」
と指摘した。
 さらに共産党政治局の集団学習会で、腐敗がはびこれば党が不安定となるリスクが増し、党の統治が崩壊する可能性があるとの認識を示した。
 就任早々「腐敗撲滅」にかける決意を繰り返しており並々ならぬ決意のあらわれといえる。

 外交的には、胡錦濤政権と同様、対米関係を重視した国際協調路線を歩まざるを得ない。
 これら目標実現のためには、広く海外諸国との貿易・投資交流が不可欠だからだ。
 経済分野まで影響が及び「政冷経冷」状態に陥っている日中関係は打開できるだろうか?

▽GDP倍増へ日中産業連携は不可欠

 習氏は尖閣諸島国有化の直後の九月に「日本政府の国有化は茶番だ」と強く反発した。
 その一点で「対日強硬派」と見るメディアも多い。
 就任当初は足場を固めるため強硬発言が飛び出すだろうが、基盤が確立するにつれ協調的なスタンスに舵を切るのではないか。 
 経済の視点からみれば、「二〇二〇年にGDP 倍増」との目標を達成するためには改革開放路線の継続と構造改革が不可欠だからだ。

 幹部人事が決まる共産党大会とその後の調整時期、すなわち「政治の季節」が終了すれば、経済が優先される時期に入る。
 「習新体制」に弾みをつけるためにも、減速している景気を底上げするため、積極的な景気対策が打ち出される可能性が大きい。

 反日デモ以降、中国の消費者の買い控えが日本企業の業績に及ぼす影響が懸念されている。
 しかし、日本の部品や素材、工作機械を使わなければ中国の製造業は成り立たない。
 政治の季節が終わり、習近平新体制がスタートしたこと、中国当局の優先課題が景気対策に移ったことも追い風となるだろう。

 中国の陳徳銘商務相は記者会見で、尖閣諸島紛争を背景にした日中間貿易の減少について、
 「グローバル化した現在、特に日中間の産業は密接につながっており、こうした状況を見たくない」
と、両国間の貿易低迷は中国にとっても好ましくないとの考えを示した。
 日中韓3カ国のFTA(自由貿易協定)交渉もスタートした。
 政治的な摩擦と経済関係は切り離して考えるべきだとの方向にシフトする可能性が大きい。

<「コラム・巨象を探る」はジャーナリスト八牧浩行(Record China社長・主筆)によるコラム記事。近著に「中国危機 巨大化するチャイナリスクに備えよ」(あさ出版)がある>


 おそらくもっともしたたかなリーダーがこの習近平だろう。
 にこにこしながら、ウラで平然とゴリ押しをする。
 正義を唱えながら、悪を見事にやってのける。
 そんな感じのリーダーだろう。
 わかりにくい指導者でもある。
 日本は、この指導者に翻弄される可能性が高い。







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